何書こうかしら?

同じ無観客でも…

彼と出会ったのは……厳密に言うなら、彼の声と出会ったのは、今から25年ぐらい前になる。

ラジオから流れてきたその声を聞いた時、大きな衝撃を受けた。

 

男性のようで女性のようでもある。

力強く攻撃的なようで優しい。

 

とにかくびっくりした。

自分が歌を勉強し始めた頃とも重なって、「こんな声、どうしたら出せるの?」と尊敬の気持ちもあった。

 

その声の持ち主は

X JAPANのToshIさん。

 

それからX JAPANをずっと聴くようになった。(当時はX)

ピアノが弾けたので、YOSHIKIのパートを弾きながら、ToshIのパートを歌うのは至福の時だった。

 

でもあんなに素晴らしい声は誰にでも出せるわけはない。

 

美空ひばり宇多田ヒカルの声には普通の人よりも、アルファー波という聴く人をリラックスさせる波動が多いらしい。

 

私はToshIの声も、聴く人に特別な何かを感じさせる力があると思う。

 

それとあの憂いに満ちた表現力は、ただ自分の人生を惰性で生きてる人間には出せないものだ。

たぶん彼が小さな頃から、感受性豊かにいろんなものを見聞きし経験してきたから、深みのある表現が可能なんだと思う。

(Xの解散後、ちょっとおかしなことになっていた彼の言動も、その豊かな感受性のせいだったに違いない)

 

私なんかは日本歌曲やオペラで愛の歌をうたっても、いつも「なんか伝わらない。恋愛経験が乏しいからかしら」なんて言われて恥ずかしい想いをしている。

 

彼の素晴らしさはそれだけではない。

 

それは昔の声を維持し続けていること。

 

鍛練を怠り年月を重ねたせいで声が出なくなっていく歌手や、声が低くなってしまい昔の自分の曲をキーを下げてでないと歌えなくなってしまった歌手を山ほど知っている。

 

それに比べて彼の声は衰えていない。

年齢を重ねたことによるエネルギー不足は多少あっても、声自体は変わってないと思う。

たぶんキーもそのままのようだし、声量も前と同じような感じがする。

昔と変わらない声を維持することの大変さは私も少しわかっているつもりだ。

 

天性の声、感受性、表現力……

いろんなものが特別な彼だが、最も特別なのはその声を維持していること。

 

きっと相当な努力を陰でしていると思う。

もしそうでなかったら

素晴らしい声とともに、その素晴らしさを失わない特別な力も授けられたスペシャルな人なんだろう。

 

9月30日に彼らが行ったという無観客ライヴのニュースを見た。

彼ららしいと思った。

でもギャラなどのお金のこともあるのかなとまたひねくれて考えてしまった。

それにしてもあのライヴの様子は奏者のはしくれの私としては頭が下がる。

 

私も昔、事務所のキャスティングミスが原因で、無観客で歌ったことがある。

(もちろんそこにはギャラが大きく関わっていたのだが…)

私は「誰も聞いてないからいいか」と、勝手に歌詞を変えたり、声をセーブしたり、ところどころ歌わなかったりした。

 

無観客でも全力でパフォーマンスしたX JAPANとはすごい違いだ。