早期教育の後悔
ある早期教育の教室で講師をしていたことがある。
その教室の創始者の教育論と自分がやりたい教育で重なる部分が多かったからだ。
しかし、勤めてから一年ぐらいした時から「なにか違う」と感じ始めた。
辞める頃にはその教室の教育に批判的な気持ちになっていた。
何が違うと感じたかは言葉で表現するのが難しい「何か」だった。
今、藤原智美著「なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか」を読んでいる。
図書館でこのタイトルを見た時「犯罪など特異な行動を起こす少年たちを絵という観点から考察する本だろう」と思った。
「以前にも似たような本を読んだし読まないでいいか」と思ったけどなんとなく気になって借りて帰ってきた。
読み始めると「ん?ん?んー?!」という感じでとても興味深く読み進めた。
現在良かれとされている母子密着育児についてあらゆる角度から見ていく内容だ。
「三歳までは母親の私がこどもを見る」
と決めてがんばっていた私には青天の霹靂という感じだった。
この本は、異常行動を起こすような特異なこどもについて書いてあるわけではなく、ごく普通に見えるこどもが母子密着育児による母親の過度な養育、教育に押し潰されていく可能性について書かれている。
「腕のない絵を描く」のは、暴力やネグレクトを受けたこどもではなく、むしろ逆に母親の過保護、過干渉と行きすぎた教育を受けたこどもだという。
早期教育についても、
脳の成熟がなされていない段階で、こどもに強制的な学習をさせることに警鐘を鳴らしている。
私が勤めていた教室でも母親に「シナプス」「3歳神話」「臨界期」などの言葉をレクチャーして「今、学習すべき」と勧めていた。
今はその教育に自分が加担していたことに後悔している。
あの教育は間違っていたと胸を張って言える。
この本を読んでそれがはっきりわかった。